貸付自粛制度とは|申請をしてデメリットはないのか。

貸付自粛制度とは

貸付自粛制度とは、消費者金融やクレジット会社、金融機関などからの借入をできないようにするための制度です。
原則として本人が申告するもので、自らの浪費癖やギャンブル依存症などで悩んでいる場合に借金を増やさない対策として有効な手段と言えます。
しかし、貸付自粛制度は利用する際の注意点もあるので、安易に申請すると後悔するかもしれません。
貸付自粛制度の仕組みと注意点を把握したうえで申請し、自身の浪費癖やギャンブル依存症などとしっかり向き合っていきましょう。

貸付自粛制度は、個人信用情報機関に貸付自粛対象者として登録し、貸金業者やクレジット会社、金融機関などに対し金銭の貸付をしないよう求めるものです。
貸付自粛制度の申請を済ませておくと、クレジットカードやカードローンへ申込しても審査時の信用情報機関への照会により自粛対象者であることが分かり、審査通過しない仕組みです。
たとえば自らの浪費癖やギャンブル依存症などにより、カードローンや消費者金融を利用して本人や家族の生活に支障を生じさせてしまう可能性がある場合に是非活用すべき制度です。
貸付自粛制度を利用すれば新たな借金を増やす心配がなく、多重債務者にならないで済むというメリットがあります。
ちなみに貸付自粛制度は無料で利用できるのも魅力です。

なお、貸付自粛対象者として登録する信用情報機関は、日本信用情報機構(JICC)、シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)の三機関です。

登録される内容と有効期間

貸付自粛情報として登録される内容は、氏名・性別・生年月日・住所・電話番号・勤務先名・勤務先電話番号です。
また、貸付自粛の有効期限は、貸付自粛情報が個人信用情報機関に登録されてから5年以内とされています。

貸付自粛制度を申請して生じるデメリット

貸付自粛制度を利用すれば新たな借金ができなくなるメリットはあるものの、さまざまな注意点を把握しておく必要があります。

家族の申告はできない場合が多い

貸付自粛制度はあくまで本人が申告できる制度なので、家族の浪費癖に悩む場合でも本人以外が申告することは原則としてできません。
ただし、本人が未成年や成年被後見人の場合は、本人の親権者や後見人といった法定代理人が申告することが可能です。
また、本人が失踪中で所在不明である場合は配偶者または二親等内の親族が申告することもできます。
社会経験が乏しく判断能力が未熟な未成年や、失踪してしまった本人に代わり家族が貸付自粛制度の申請をできるのは安心ですね。
ただし、配偶者または二親等内の親族が申告する際は以下の要件をすべて満たす必要があるので注意しましょう。

  • 自粛対象者の配偶者又は二親等内の親族であることを客観的な資料で確認できること
  • 自粛対象者が所在不明であることが客観的な事実により証明できること
  • 自粛対象者の所在不明の原因が金銭の貸付による金銭債務の負担を原因としている可能性があること
  • 貸付自粛の対応をとることが自粛対象者の生命、身体又は財産の保護のために必要があると認められる場合であること
  • 自粛対象者本人の同意を得ることが困難であること

本人が所在不明であることを証明する書類は、警察から交付してもらえる家出人捜索願証明書や家庭裁判所が発行する失踪宣言の審判書などが該当します。

    なお、本人が所在不明で配偶者または二親等内の親族が申告することが著しく困難な場合は、三親等内の親族及び同居の親族による申請も認められています。
    その場合は、前述した要件に加え、配偶者又は二親等内の親族が申告することが著しく困難と認められること、申告者が自粛対象者の三親等内の親族及び同居の親族であることを客観的な資料で確認できることという要件も満たさなければなりません。

    一度申請をすると3ヵ月間は撤回できない

    貸付自粛の申告をすると、原則として申告日から3ヵ月が経過するまでは貸付自粛情報を撤回できないので、急にローンの契約などが必要になると不都合に感じる可能性があります。
    また、この期間は日常生活で身近なクレジットカードの作成や携帯電話本体の割賦契約もできなくなるので要注意です。
    なお、貸付自粛の申告が法定代理人等によるものである場合には、自粛対象者本人は貸付自粛情報を取り消せないことも把握しておきましょう。
    ただし、自粛対象者本人または法定代理人等による申告でない場合には申告日から3ヵ月が経過しなくても自粛対象者本人は貸付自粛情報を取り消すことができます。

    情報が登録されるまで3営業日程度かかる

    貸付自粛制度の申請をしても、すぐに信用情報機関に反映されるわけでなく自粛対象者であることが登録されるまでは3営業日程度要します。
    そのため、貸付自粛制度の申請をして万が一気が変わってしまったら、情報が登録されるまでの間にカードローンやクレジットの申込をして借入ができるということになります。
    貸付自粛制度をすることに強い意志を持っていれば良いですが、迷い悩みながら貸付自粛制度を申請する場合はこの3営業日程度を我慢するよう意識を高く持たなければなりません。
    また、失踪した家族に借入をして欲しくない場合も、早急に必要な書類を用意し申請をしなければ情報登録される前にクレジットやカードローンの契約をされてしまう可能性もあるので注意してください。

    契約中のカードローンやクレジットカードは利用を制限されない

    貸付自粛制度の申請をすれば新たなクレジットやカードローンを利用することはできなくなりますが、すでに契約中のものは今まで通り使うことができます。
    クレジットカードやカードローンの利用可能枠がほぼない状態なら借金が増える心配はないものの、まだ限度額まで余裕がある場合は貸付自粛制度を利用していても借金がかさんでしまう危険があるのです。
    手元に利用可能なクレジットカードやローンカードがあるなら貸付自粛制度の申請をするとともに、家族に預けて自身が利用できないようにする、完済済のローンカードなら解約しておくことをおすすめします。

    信用情報機関に加盟していない業者からは借入できてしまう

    貸付自粛制度は信用情報機関を介して貸金業者やクレジット会社が貸付しないようにする仕組みなので、信用情報機関に加盟していない業者には自粛対象者であることが伝わりません。
    とは言え正規の貸金業者などは、信用情報機関に加盟している場合がほとんどなので安心してください。
    注意が必要なのは貸金業登録をせずに融資を行っている闇金で、闇金は信用情報機関の加盟資格を満たしておらず信用情報機関の会員になることができません。
    そのため、貸付自粛制度を申請していてどうしてもお金を借りたい衝動に駆られると闇金からの借入を検討してしまう可能性があります。
    闇金でお金を借りたら法外な高金利で貸付をされてしまい借金が膨れ上がるリスクがありますし、返済が滞ると勤務先や自宅にまで催促の電話がかかってきて周囲にまで迷惑をかけかねません。
    貸付自粛制度を申請してせっかく借金を増やさずに済んだのに闇金を利用してしまっては逆効果です。
    そうならないために闇金からは絶対に借りないように意識を高く持ちましょう。

    貸付自粛制度の申告方法

    貸付自粛の申告方法は、WEB、郵送、窓口の3通りがあります。
    なお、いずれの方法でも申告時には以下の書類のうち「氏名、住所、生年月日」の記載のある本人確認書類が2点必要になります。

    • 運転免許証
    • 運転経歴証明書
    • 個人番号カード[マイナンバーカード]
    • 住民基本台帳カード
    • 旅券[パスポート] 【住所欄も含む】
    • 各種健康保険証【表裏両面】
    • 在留カード
    •  特別永住者証明書
    • 身体障害者手帳
      (精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、戦傷病者手帳)
    •  住民票(住民票の記載事項証明書含む)
    • 印鑑登録証明書
    • 年金手帳【住所記載のあるもの】
      (国民年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、母子健康手帳含む)
    • 戸籍の謄本
      (抄本含む。但し、戸籍の附票の写しが添付され住所確認ができるものに限る。)
    • 上記に掲げるもののほか、官公庁から発行され又は発給された書類その他これに類するもので、氏名、住所、生年月日の記載があるもの

    なお、本人書類のうち有効期限のあるものについては有効期限内のもの、それ以外は発行日から6ヵ月以内のものであることが条件となります。

    WEBでの申告

    WEBでの貸付自粛申請は、専用の入力フォームへ申告事項の入力と本人確認書類2点の撮影が必要となります。
    申告内容に入力の不備があったり、本人確認書類が不鮮明や文字が欠けているもしくは不足があったりすると受理されないので気を付けましょう。

    WEBでの貸付自粛申請の手順はこちらです。

    1. 専用入力フォームの【貸付自粛に係る承諾条項】を承諾のうえ申告手続き開始する
    2. 専用入力フォームの案内に従い必要事項を入力し本人確認書類画像をアップロードする
    3. 協会が申告データを受信したら、平日に申告者へ本人確認の電話が入る
    4. 申告者アドレス宛に受理または不受理の通知がされる

    郵送での申告

    郵送での申告には、本人確認書類2点のほか、申告書と返信用切手404円分の用意が必要です。
    また、申告理由がギャンブル等による場合は、ギャンブル等依存症への対策のため申告確認書も作成し同封する必要があります。
    申告書および申告確認書は、日本貸金業協会相談・紛争解決センター公式サイトよりダウンロードするか最寄りの各支部へ電話で申し込みしましょう。

    1. 申告書を用意する
    2. 申告書の【貸付自粛に係る承諾事項】を確認する
    3. 申告書、本人確認書類2点、返信用切手404円分を同封して貸金業相談・紛争解決センターもしくは近隣の支部へ郵送する
    4. 申告書が協会に到着後、平日に申告者へ本人確認の電話が入る
    5. 申告書の控えが受付後1週間程度で郵送にて届く

    郵送申請では電話での本人確認ができないと、受理できず申告書一式を返却されることになるので注意しましょう。
    また、申告書に記載不備があったり、本人確認書類や返信用切手が不足していたりする場合でも受理されません。

    受付窓口での申告

    受付窓口へ直接出向いて申告する場合、自身で申告書を用意しなくて良いですが、本人確認書類2点を原本で持参する必要があります。
    なお、受付窓口は北海道、宮城県、埼玉県、東京都、愛知県、石川県、京都府、大阪府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県に設置されています。
    申告理由がギャンブル等による場合は、ギャンブル等依存症への対策のため「貸付自粛申告確認書」の記載及び状況の聴取が必要となることを理解しておきましょう。

    1. 最寄りの受付窓口の開設日時を電話で確認する
    2. 本人確認書類2点の原本を持参し受付窓口へ出向く