平成20年1月18日最高裁判決

2010年4月 7日

 ≪判決要旨≫

 (判決要旨前段)
同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が
繰り返されることを予定した基本契約が締結され、
この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち
制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、
過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては
両者の間に他の債務が存在せず、
その後に、両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、
この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には、
第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を
新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り、
第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、
第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である。


 (判決要旨後段)
そして、第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さや
これに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、
第1の基本契約についての契約書の返還の有無、
借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、
第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間にお
ける貸主と借主との接触の状況、
第2の基本契約が締結されるに至る経緯、
第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して、
第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、
第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが
事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には、
上記合意が存在するものと解するのが相当である。

 

 ≪判決内容の考察≫

 平成18年(受)第2268号不当利得返還請求事件。

平成19年7月19日最高裁判決(基本契約の締結はなし)において、
契約は別であっても、借換えや貸増し・空白期間の長さなど、
取引内容によっては充当合意があるといえるとされましたが、
取引内容とは具体的にどのようなところを見て判断すべきであるかをある程度示した判決です。

この判決では締結されている基本契約が別々に2つあるケースです。
判決要旨前段が原則となり、後段が例外といった感じです。

まず前段です。
リボルビング方式による基本契約が締結され、これによって過払い金が発生しました。
その後に改めて別の基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引にかかる債務が発生した場合、
先の基本契約に基づく取引により発生した過払い金を後の基本契約に基づく新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り」、
先の基本契約に基づく取引によって発生した過払い金は、
後の基本契約に基づく取引にかかる債務には充当されない、
という内容です。


そして、後段は、前段のような状態になった場合に、下記の(6つの)事情を考慮して、
先の基本契約に基づく(見た目の)債務が完済されてもこれが終了せずに、
先の基本契約に基づく取引と後の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付け取引であると評価できる場合には、
先の基本契約に基づく取引によって発生した過払い金を、
後の基本契約に基づく取引にかかる債務には充当する旨の合意が存在するものと解される。

考慮すべき事情は、
① 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さや
 これに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
② 第1の基本契約についての契約書の返還の有無
③ 借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
④ 第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における
 貸主と借主との接触の状況
⑤ 第2の基本契約が締結されるに至る経緯
⑥ 第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同
です。


先の基本契約に基づく取引と後の基本契約に基づく取引とが、事実上1個の連続したものと評価できるかどうか?の視点で考えられますので、
① 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間は、長ければ長いほど良く、
 この最終の返済から、第2の基本契約に基づく借入までの期間は短ければ短いほど良いです。
② 第1の基本契約についての契約書は、当然返還されていない方が、継続している感が強くなります。
③ カードが失効手続きをとっていれば契約が切れてる、とっていなければ連続しているイメージです。
④ 第1基本契約終了から第2基本契約スタートまでの空白期間の貸主と借主との接触の状況については、
 借りてくれと頻繁に電話やDMが来ていた状況のほうが良い?のでしょうね。
⑤ 第2の基本契約が締結されるに至る経緯については、通り一遍の、形だけの審査をしているくらいであれば、
 繋がっていると評価しやすくなり、第1基本契約締結時と同じレベルで新たに審査ということであれば、
 繋がりにくくなります。
⑥ 利率等の契約条件についても、第1の基本契約のときと同じような条件であればあるほど、
 連続しているように評価できて良い、ということになると思います。

これらを総合的に判断して、事実上一連の取引であると評価できる状態であれば、繋げて計算できることとなります。

現在においても、この取引の分断が一番の争点です。
裁判官によっては、「総合的に」ではなく、ちょっと間が空いていれば、
それだけでバッサリいかれることもあります。

これは判決によりこう、と割り切れるものではないため、裁判官によって随分と違いが出るのが悩ましいです。
 

 

 判決文はこちら → 平成20年1月18日最高裁判決 (PDF)

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