平成18年1月13日最高裁判決

2010年4月 2日

 ≪判決要旨≫

 (判決要旨前段)
本件期限の利益喪失特約のうち、
上告人A1が支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は、
同項の趣旨に反して無効であり、上告人A1は、
支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば、
制限超過部分の支払を怠ったとしても、期限の利益を喪失することはなく、
支払期日に約定の元本及び利息の制限額の支払を怠った場合に限り、
期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。

 

 (判決要旨中段)
そして、本件期限の利益喪失特約は、法律上は、上記のように一部無効であって、
制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども、
この特約の存在は、通常、債務者に対し、
支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り、
期限の利益を喪失し、残元本全額を直ちに一括して支払い、
これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え、
その結果、このような不利益を回避するために、
制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。

 

 (判決要旨後段)
したがって、本件期限の利益喪失特約の下で、債務者が、利息として、
利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、
上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、
債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできない
と解するのが相当である。

 

 

 ≪判決内容の考察≫

平成16年(受)第1518号貸金請求事件、相手方業者はシティズ(アイフルグループ)です。
近年の過払い金返還請求訴訟に関する最高裁判決の中で、基盤となるようなものです。

消費者金融や信販会社等の各貸金業者が、違法金利による利息をとっていた根拠として、
みなし弁済」というものがありました。
平成18年1月13日判決を理解する上で、前提となるものですので、このみなし弁済の説明から始めます。

みなし弁済適用の要件として下記の5つの要件すべてを満たしている場合は、
利息制限法に定められた金利(15~20%)を超える出資法による金利(~29.2%)までは
もらってもいいですよ、というものです。

債権者が貸金業者であること
契約する際、貸金業法17条の要件を満たす書類を交付していること
弁済する際、貸金業法18条の要件を満たす書類(受取証書)を直ちに交付していること
債務者が約定金利による利息を、利息としての認識(利息がいくらか理解している状態)で支払ったこと
債務者が約定金利による利息を(詐欺や脅迫によらず)任意に支払ったこと

これら5つの要件をすべて満たしている場合は「適法」、満たしていない場合は「違法」ということになります。
この判決が出る前も、結局いずれかの要件が抜け落ちていることが多く、
大半はみなし弁済が認められることはありませんでしたが、稀に認められることもありました。

しかし、この判決によって⑤の要件「任意に支払ったこと」を満たすことが、(ほぼ)なくなりました。


もう一つ、この判決を理解する前提知識として、「期限の利益の喪失」というものがあります。
期限の利益(分割で支払っていくことのできる債務者の利益)を喪失すると、
一括返済を求められるようになり、さらに利息ではなく遅延損害金を付加する必要が出ます。 


「みなし弁済」と「期限の利益の喪失」の知識を基に、判決を確認します。

貸金業者からお金を借りる場合、金銭消費貸借契約を締結します。
そしてこの契約書には必ず「期限の利益喪失特約」が入ってます。

この貸金業者作成の契約書に記載された期限の利益喪失特約の内容は、
「約束の日に、約束の金額(元金と約定利息)を支払わなければ、期限の利益を喪失します。」
というものです。

そして、「これではマズイよ」というのが、判決要旨の前段部分における内容です。
利息制限法に基づく法定利息と元金の支払いを怠った場合のみ、期限の利益喪失とすべきであると判示しました。

例えば、元金がその月の返済額として元金が3万円、法定利率による金利が1万円で、
約定利率による金利が2万円の場合、貸金業者作成の契約書記載の期限の利益喪失特約では、
元金3万円+約定利息2万円の合計5万円を支払わなければ期限の利益を喪失することとなります。

しかし、約定金利2万円-法定金利1万円の差額1万円については、利息制限法により無効であるため、
本来であれば元金3万円+法定利息1万円の合計4万円を支払えばよいところ、
超過しているその差額1万円部分に限っては無効だよということになります。


無効であるにもかかわらず、この期限の利益喪失特約の内容では、
無効部分も含めて合計5万円を支払わなければ期限の利益を喪失してしまうと誤解を与えるものであり、
この誤解によって、事実上支払を強制していることになると言えます。
ここが判決要旨中段部分です。


最後に判決要旨後段部分に入りますが、このように事実上支払を強制している状態で、
果たして自由に意志に基づいた「任意」の支払であると言えるのか、いや言えない
というものです。


これにより、5つのみなし弁済成立要件の1つ、「任意に利息を支払ったこと」の要件を満たすことはなくなり、
つまり、「5つの要件すべてを満たす」ということがなくなりました

この判決はみなし弁済を規定した貸金業法43条を完全に死文化させました。

この結果、原則として借入金はすべて利息制限法に基づく利率に引き直すことができるようになりました。
幹がしっかりした感じです。
ここから後の最高裁判決は、この判決に比べれば、その枝葉といっても過言ではありません。

画期的な判決であるとのマスコミ等の影響もあって、この判決が出た結果、
「自分はどうしたらいいんだ。。」と悩んでおられた多くの方々が、
「もしかしたら私の場合もなんとかなりますか?」と問い合わせていただくことが爆発的に増えました。

 

 判決文はこちら →  平成18年1月13日最高裁判決 (PDF)

平成17年7月19日最高裁判決

2010年4月 1日

≪判決要旨≫

 貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合には、
その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り、
貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、
保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)
に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。
そして、貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは、
その行為は、違法性を有し、不法行為を構成するものというべきである。

 

 

≪判決内容の考察≫

平成16年(受)第965号過払金等請求事件。
相手方の業者は、キャスコ(現プライメックスキャピタル)です。

この判決が出るまでは、貸金業者は様々な理由をつけて取引履歴の開示を拒否していました。
取引履歴が開示されなければ、利息制限法に基づく引き直し計算はできません。
貸金業者は、その貸付債権を利息制限法に引き直した結果を把握することができますので、
取引履歴の開示請求があった場合、貸付債権がいくらまで減額するのか、
あるいは幾らくらいの過払いになっているのかを当然に確認することができると思われます。

その貸金業者が、司法書士・弁護士等により履歴開示の請求を受けて引き直し計算を行った結果、
請求された履歴に関する取引が過払い状態になっているような場合などは「特に」ですが、
様々な理由(理屈?)をつけて開示を渋っていました。

大手の消費者金融であっても、取引の全部が一度に出てくることはほとんどありませんでした。
まずは3年分、10年分、最後に全部、といった具合です。
開示すればするほど、自分の債権額が減り、あるいは過払い金として支払う額が大きくなるので、
出したくない気持ちは、当然といえば当然です。

ただ、小出しであっても出てくるだけまだマシです。
「管理しているコンピューターの関係で、3年以上経った履歴は自動的に破棄される」など、
顧客の管理が経営的にも非常に重要な消費者金融業者の言い分としては、
とても考えられないお粗末な理由で拒否されるようなこともありました。

取引履歴自体が出てこない以上、その内容がわからず、争うこともできません。

そのような中、「貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは、
その行為は、違法性を有し、不法行為を構成する」旨のこの最高裁判決が出たため、
その後は以前と比べてスムーズに開示がなされるようになりました。

中小の消費者金融や、もともと悪質であると評判の悪かった業者などは、
「これ以上はない」「これ以前の履歴は棄ててしまった」などと未だに
全開示をしないところもありますが、この判決により随分と状況は改善されました。

 

 判決文はこちら →  平成17年7月19日最高裁判決 (PDF)

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